東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)194号 判決
一 請求原因一及び同二の事実は、本件審決の謄本が原告に送達された日時の点を除いて、当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第三号証、第四号証の二、第六号証、同乙第一号証、第三号証の一、第四号証、第六号証、第一五号証の一ないし九及び証人古屋義雄の証言を総合すれば、ドイツでは、「ぶどう酒」の分野において古くから「CABINET」の語が高級ドイツワインの品質表示語(デラツクスの意味)として使用されてきていたこと、その後一九七一年の新ワイン法の制定に伴ない、ドイツ連邦共和国では従来の「CABINET」の語と語源を同じくし発音も酷似するドイツ語「KABINETT」(カビネツト)の語を使用するように規定されたが、右新ワイン法制定後もそれまでの使用態様にしたがい「CABINET」の語も品質表示語として使用されていること、右新ワイン法においては、ドイツワインを(1)高級酒、(2)上級酒、(3)並級酒の三段階に格付け、(1)の高級酒には(i)カビネツト(KABINETT)、(ⅱ)シユベートレーゼ、(ⅲ)アウスレーゼ、(ⅳ)ベーレンアウスレーゼ、(ⅴ)トロツケンベーレンアウスレーゼの五段階とアイスワインの六種が定められていることが認められる。
そして、前掲甲第三号証、同乙第一号証、成立に争いのない甲第五号証、弁論の全趣旨によつて成立を認める乙第二号証の一・二、証人古屋義雄の証言によつて成立を認める乙第七号証、成立に争いのない乙第八号証ないし第一四号証、前掲乙第一五号証の一ないし九、証人古屋義雄の証言を総合すれば、我が国においては、ドイツワインの輸入とその国内販売に伴ない、ドイツの「ぶどう酒」の分野における「CABINET」の語の前示用法に由来して、我が国の「ぶどう酒」の分野においても、本件商標を構成する「CABINET」の文字を、本件商標の登録日(昭和四九年七月一五日)以前から、「高級ドイツワイン」「ドイツ産の高級ぶどう酒」「とつておきの上級ドイツワイン」等、「ぶどう酒」の品質を表示するための語として広く使用されてきていたことが認められる。
そうすれば、本件商標の「CABINET」をその指定商品中「ぶどう酒」に使用するのは、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきものであり、「ぶどう酒」と性格、取引系統等において似ている「ぶどう酒」以外の「果実酒」に本件商標を使用するときは、右商標を付せられた商品があたかも「高級ドイツワイン」「ドイツ産の高級ぶどう酒」「とつておきの上級ドイツワイン」に係るかのごとく商品の品質について誤認を生ぜしめるおそれがあることは明らかであるから、この点に関する審決の認定判断に誤りはなく、原告の主張は理由がない。
三 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却することとする。
〔編註〕 本件に関する商標は左のとおりである。
<省略>